product いなばの特産品

鳥取ナシ
(とっとり梨)

pear

産地背景(歴史、地形)

 鳥取県東部で生産されている梨には『二十世紀梨』を筆頭に、青梨では新品種である『夏さやか』・『なつひめ』があり、赤梨には『二十世紀梨』に次ぐ生産量を誇る鳥取県ブランドの新品種『新甘泉』を筆頭に『秋甘泉』・『王秋』・『秋栄』・『豊水』・『新興』・『あたご』などバラエティ豊かな梨があります。これらの梨は収穫時期によって8月上旬頃から12月にわたり選果され、京阪を中心に東は東京都へ、西には鹿児島県の市場へ出荷されます。ここでは、鳥取県東部『JA鳥取いなば』管内で生産されている梨を紹介させて頂きます。

二十世紀梨の歴史

二十世紀梨

 まずは全国でも生産量一位を誇る二十世紀梨の紹介から始めさせてもらいます。
 そもそも二十世紀梨の栽培は明治21年千葉県松戸市で松戸覚之助という当時13歳の少年によって偶然発見されたことから始まります。それは、ごみ置き場のまわりに生えていたそうです。この頃、梨といえば果皮が茶色の赤梨であったのに対し、「色は淡緑色で肉質がやわらかく、水分が多くて口の中にいれると自然にとけるような美味しい梨」として注目を集めました。その後、「二十世紀になったら梨の王様になるだろう」と期待して二十世紀梨と名づけられました。

 鳥取県には明治37年(1904年)から千葉県から導入されました。そこから黒斑病という病気の大発生や第二次世界大戦中の資材不足などの様々な苦難を乗り越え100年以上の栽培歴史を持ちます。
 梨栽培全般に言えることですが、冬には枝の整理や来年の実を生らせるためせん定をして、春から実を生らせるために人工授粉をして、実がなったと思ったらそこから良い梨を見極めて摘果をして、病気にならないように袋掛をして、病害虫と戦い、自然災害に対抗し年中に渡り栽培管理を行っています。
 こんなにも大変な作業がありますが、鳥取大学学長及び農学部長であった林真二氏はこのような細かな気配りの労働の生産物であることから、『二十世紀梨』を外国人から見れば『生きた芸術品』であると称していました。

二十世紀梨の花と旬

 二十世紀梨の花は、実は鳥取県の『県花』に選定されています。一見桜にも似た白い花が4月中旬頃に果樹園で満開になる様は、園地に白い絨毯がひかれたように見えなくもありません。
 旬は8月下旬から9月中旬頃になります。綺麗な青い肌をしており、さっぱりした甘みとシャリシャリ感が二十世紀梨のおいしさになります。青い肌のものもおいしいですが、肌が黄色く変化したものも違った甘みと食感があり、おいしく頂けます。

その他の代表品種

新甘泉(しんかんせん)

新甘泉

 鳥取県園芸試験場で育成され平成20年2月に登録された鳥取県オリジナルブランドの赤梨です。JA鳥取いなばでは二十世紀梨に次ぐ栽培面積を誇っており、二十世紀梨と同等の力を入れて栽培している品種です。この『新甘泉』は高糖度の赤梨「筑水」に「おさ二十世紀」をかけあわせて育成されました。青梨特有のシャリシャリ感は損なわず、糖度が高くほとばしるような甘さが特徴です。
 旬は8月下旬から9月中旬頃になります。

なつひめ

 鳥取県園芸試験場で育成され平成19年3月に登録された鳥取県オリジナルブランドの青梨です。高糖度の赤梨「筑水」に「おさ二十世紀」をかけあわせて育成されました。『新甘泉』の兄弟(姉妹?)ですね。二十世紀梨より収穫がやや早く、あまみと酸味のバランスが良く、さわやかな味わいです。
 旬は8月下旬から9月上旬になります。

王秋(おうしゅう)

 平成15年に品種登録された赤梨です。11月上旬頃から出荷される晩生梨で、ラグビーボールのようなたて長の形が特徴的です。糖度は高く果肉が柔らかいうえ、今までの晩生梨にはないシャリシャリとした瑞々しい食感を楽しめます。貯蔵性が非常に高く、常温で3月頃まで保存可能なため、お歳暮などの贈答用として人気上昇中です。
 旬は11月上旬から12月中旬頃になります。

あたご

 冬の赤梨の代表品種で1玉1kg以上にもなる超大玉梨です。果肉は柔らかく、甘さと独特な香りが人気の高級果実です。 旬は11月下旬から12月中旬頃になります。

秋栄(あきばえ)

 鳥取大学が平成9年に登録した赤梨の新品種です。8月下旬頃から出荷され、ショ糖を多く含む上質な甘さは一度食べると虜になるでしょう。ちなみにこのページの筆者の恩師が栽培育成及び品種登録に関わっております!(自慢)
 旬は8月下旬から9月上旬頃になります。

木乃実神社

 JA鳥取いなばの湖山本店のすぐそばには二十世紀梨の原木が御神体としてお祀りしてある全国でも珍しい神社があります。
 「JA全農とっとり」の公式サイトによると

 昭和15年に鳥取県果物同業組合が県内の梨生産者より浄財を募って計画し、昭和16年6月25日に県農業試験場津ノ井園芸試験地内に造営されました。
 以来、毎年この日を例祭日として果実の豊穰祈願祭が行われ、さらに昭和59年11月からは秋の収穫感謝祭が加わりました。
 現在地に遷座されたのは昭和48年のことで、鳥取県果実会館の建設に際し、木乃実神社造営奉賛会が組織され、当地に新築・移転されたものです。同時に宗教法人「木乃実神社」が設立され、現在はJA全農とっとりが管理しています。

 とのことです。

ちなみに

 千葉県から鳥取県へ二十世紀梨を導入された方は北脇永治氏という方ですが、この方が鳥取へ持ち帰った苗木、つまり現在栽培されている二十世紀梨の祖先に当たる親木は、平成11(1999)年に開園した「とっとり出合いの森」(鳥取市桂見)でいまも元気に実をつけています。
 鳥取県東伯郡湯梨浜町には、北脇永治氏から穂木を譲り受けて接木した「百年樹」が健在です。